玄善允の在日二世物語ー在日、大阪、済州そして・・・ー

済州出身の両親の次男として大阪で生まれ育った在日二世の呟き

2026-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(5)

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(5) 9.韓国の男女関係についての僕の印象の基盤の一つとしての済州での見聞 まずは、僕の40歳半ば以来の30年に亘る頻繁な済州訪問時におけ…

「生き残った者の祝福」の5

「生き残った者の祝福」の5 4. チェボㇺは真昼になってようやく,地帯司令部のアジトに着いた。高い丘で見張っていた隊員たちが、チェボㇺが丘を登って乗って来るのを、遠くから目にとめて、迎えに降りてきた。 「どこへ行ってきたんだ?朝も見かけなかっ…

「生き残った者の祝福」の4

「生き残った者の祝福」の4 3. 李徳九第一地帯司令官は出動準備をすべて整えると、ぐっすり眠り込んでいるチェボㇺを起こした。いつもそうだった。眠りから覚めたチェボㇺは、自分を見下ろす司令官と視線があうと、はっと起き上がり、横にある背嚢と小銃…

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(4)

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(4) 8.韓国社会の女性差別の改善もしくは変革に向けての法的整備 日本における韓国の男女差別に関する認識は、先にも触れたことだが、すっ…

「生き残った者の祝福」の3

「生き残った者の祝福」の3 武装闘争を決議して、その決行の日時を調整中の昨年の3月だった。李司令官は先任の金司令官とともに武装闘争を積極的に推進する立場だった。 それ以前にもチェボㇺは、学生への情報業務を担当する部署に配属されて活躍していた。…

「生き残った者の祝福」の2

「生き残った者の祝福」の2 2. 「チェボㇺ、授業がすべて終わったら、職員室に来てくれ」 3時限の「社会生活」の授業が終わり、教室から出ていこうとしていた李先生はチェボㇺを手招きして、教壇に呼んだ。はい、と返事したチェボㇺの胸の動悸が高なった…

玄吉彦著「生き残った者の祝福」1

玄吉彦著「生き残った者の祝福」 季刊誌『本質と現象』39号2015年春号 154頁から227頁 以後に40号と41号と3回にわたって連載 拙訳の紹介にあたってのお断り これから紹介するのは故玄吉彦の晩年の小説の翻訳である。彼が主宰する季刊誌に3回にわたって分載さ…

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(3)

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(3) 6.本文の主題であるべき原著とその訳書の刊行について そろそろ本題に入いらねばなるまい。そうでもしないと、後期高齢者の中でもとり…

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(2)

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(2) 4.紹介を受けた翻訳書の版元だった同時代社と僕との馴れ初め ネットでその本の紹介を見たとたんに、その版元が同時代社と記されていた…

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(1)

『平和市場の少女―13歳の女工、その生』(申順愛著、李宗樹訳、同時代社刊、3300円(33pt))の刊行情報を受けて(1) お詫びメモ 実はこのシリーズの3回までは、数か月前にブログにアップしていたのに、それがすっかり姿を消してしまっているのに気づいた…

『漢拏山』の18

玄吉彦著『漢拏山』18 第二部星条旗時代第6章「共和国の夢」5-65. 秋なのに夕立でもあったのか、湿った木の葉が道端にうす汚く舞っていた。時折、プラタナスの枝を揺する風の音が聞こえた。仁擇とソンスは討論会を終えて、キョンウン洞の天道教会館から…

『漢拏山』の17

玄吉彦著『漢拏山』の17 第二部「星条旗時代」第6章「共和国の夢」3-43. 「やい、あそこに漢拏山が見えるぞ」 春湜が太晃丸の船上からぼんやりと山をながめていると、ソンパルが彼の肩を後ろから軽く抱きかかえて、呟いた。大声で騒ぎでもすれば、眼前…

『漢拏山』の16

玄吉彦著『漢拏山』の16 第2部星条旗時代6章 共和国の夢 41頁 (第2部の2番目の章) 1-2 待ちに待った米軍の進駐だったが、それによって変わったことなどなに一つなかった。 建準執行部の幹部たちが、米軍の代表者に会うために飛行場へ訪ねて行ったが、門…

『漢拏山』の15

玄吉彦著『漢拏山』の15 第2巻、玄善允試訳 第1刷 1995年3月30日第2刷 1995年4月25日目次第2部 星条旗時代5章 新しい旗 76章.共和国の夢 417章 一番鶏の鳴き声 1198章 北西風 1939章 忘れてしまった春 243 第2部5章 新しい夢 7頁 1945年9月28日7時。金…

『漢拏山』の14

玄吉彦著『漢拏山』の14 第1部4章夢見る島9 第一部完9. 朝鮮独立同盟傘下の朝鮮革命軍政学校の第1中隊第3小隊の副小隊長の任にある崔仁擇は、共産主義の基礎理論の学習時間中に襲いかかる眠気を追い払おうと懸命だった。それだけに、学習終わりという講師…